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広田先生最終講義 紛争解決学拾遺

2008/02/26 16:50
'93九州大学講師→紛争解決学の理論化
裁判より和解の方が解決の度合いが高い
紛争解決の学問体系がない
ただ巷で重要性の指摘はあり
ただ、紛争解決=訴訟学

「法」とは何か
行為規範・裁判規範・社会規範
+紛争解決規範
判例・過去の和解例・道徳・諸科学の成果etc.
書いてみて、名付けてみて始めて明確になる

新潟大学水谷教授・九州大学井上正造教授との鼎談
紛争解決を取り組むスタンス
学問分野として固めたい→新版

「紛争解決学」の意図
当事者からの視点
実体法の相対化
ポストモダン
草野判事(現学習院大学法科大学院教授)裁判上の和解に関する論文

思想よりプラグマティックを重視
先取り…紛争は当事者の思惑・将来の社会を見据えて解決

附帯条項付最終提案仲裁…中間をとらない
 仲裁人の選択を得るために自分の提案を適当なレベルに止める

 かつ被請求者の方が高い数値を出すこともある。その場合は中間をとる
 両当事者の満足
 ∵お互いが和解を成立させる意欲が出てくる
 そのプロセスを解明・コントロール
社会資本整備における集団調停制度(メディエーション)

国際紛争への応用
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民事基礎演習(12)

2007/12/12 16:18
中間利息控除
 金利が法定利息とリンクするか
 将来の蓋然性をどう考えるか
 法的安定性
 金利はどの程度がよいか
 運転者はY1かY2か.酒を飲んでいたかどうか.
  裁判官の心証には影響がありそう
  でも判決は都合よく証言を引いている.
  また裁判官がその点の質問を遮った.
  逮捕していたら変わっていたかも.
 バイクの速度をどう認定しているか?(判決233頁)
  事実認定とはいえない.
  相当であるとは?
 鑑定書をどう考えるか?
 
 過失割合の認定
  赤本の比率をみながら論理を組み立てる.
  先生の感覚は10〜15%の過失割合.25%は多すぎる.
 訴訟遂行態度を理由に慰謝料を増やしたことについて
 林鑑定をどうやってさがすか?
  出ている本を読んで探す.
  事故当時の時間に自ら行った結果を証拠として出す.
 裁判や紛争処理機関に持ち込んだ方が,
  保険屋の処理よりは金額が上がる.
 細かい議論をしているようだが,高度成長が終了した今
  保険会社・自動車会社・被害者をふまえた全体をみた議論
  金額も大きい.「命の値段」
 保険会社による免責の主張
  このような事件でも主張?
 当初は大工裁判官単独
  記録を読まずに責任30〜40%だと言って和解勧告.
   強く言ったので合議.
  でも顔を立てたので(と和解で強く言ったので)
   25くらいで落ち着いたのでは.
 判例時報に出さなかった.
  相手方弁護士のことをあしざまにかかれているので.
  出したら返り血を浴びる.
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民事基礎演習レポート…ウェブ上のネタ

2007/12/09 22:36
廣田先生のコラム(多分レポートの問題意識はこれ)
http://www.adr.gr.jp/columns/011.html

首相官邸ADR検討会HP
(廣田先生も委員、11回の資料2に上記に関連することが載っている)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/03adr.html

松山大学田村教授による私法原理についての説明
(わかりやすい)
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/syusei-3.htm

google信義誠実
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLJ,GGLJ:2006-31,GGLJ:ja&q=%e4%bf%a1%e7%be%a9%e8%aa%a0%e5%ae%9f

google権利濫用
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&aq=t&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLJ,GGLJ:2006-31,GGLJ:ja&q=%e6%a8%a9%e5%88%a9%e6%bf%ab%e7%94%a8

google私的自治
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&rls=GGLJ%2CGGLJ%3A2006-31%2CGGLJ%3Aja&q=%E7%A7%81%E7%9A%84%E8%87%AA%E6%B2%BB&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=

google近代私法
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLJ,GGLJ:2006-31,GGLJ:ja&q=%e8%bf%91%e4%bb%a3%e7%a7%81%e6%b3%95
とりあえず使いそうなものをアップ。

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民事基礎演習(11)

2007/12/05 13:50
中間利息控除利率
 5%…画一的確定
 4%…最高裁で確定すれば安定する.諸外国・改正案は変動制.
  現実の利率は低い.平均賃金.損害賠償は被害者救済.
 3%…実質金利=国債の30年物の税引金利,定期預金金利+α
 
予測できるかできないか?
民事法定事実と不法行為の関係

ドイツ方式 基本利息は動かさない

過失相殺
 単車の速度違反…事実をどう認定するか,それをどう評価するか
  事故後の状況は実況見分調書から
  それをどう認定するか,認定しなければならない.
 単車二人乗り
 交差点進入
 単車の著しい過失
 転回危険場所
 四輪車の著しい過失
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民事基礎演習(10)

2007/11/28 12:35
交通事故
 後遺症の場合…症状固定段階で算定
 控除の年間利率
  東京高判H12.3.22 3%
  最判H17.1.14 5%
  福岡高判 ホフマン方式
  社会情勢に応じて判断
次回
中間利息控除を何パーセントとするか
Bの過失割合は何パーセントか
自分であればどのような判決をするか
(この2点のみ判断して判決を出す)
運転者は・交差点なのか交差点でないのか・YがBを認めた時点
交通状況とBの過失との関係
(スピード違反を重視するか流れを重視するか)
慰謝料(一家の大黒柱と同様なのか通常で算定するのか)
これらの点も時間があれば議論する.

最終レポートも12月12日締め切り.40×40×3枚
これもポストに入れておく.
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民事基礎演習(9)

2007/11/21 12:42
銀座建物明渡請求事件 判決文解説

賃貸借終了に基づく明渡事件の要件事実
 借地借家法を念頭に置いて
 (主位的請求)
 ・契約の事実
 ・引渡
 ・解約の申し入れ(6月後に終了)
 ・6ヶ月が経過したこと
 ・正当の事由を基礎づける事実(評価根拠事実)
 (予備的請求)
 ・2億8千万円と引換に

借家権とは?
 権利としてどこまで確立しているか?
 立ち退きの正当事由の一部としての防御的性格
 出て行けと言われれば発生するが,出て行くと言えば発生しない バブルで値上がりが期待されるがゆえに出て行かない
 借地権の経済的意義
  建物保護法
  借地上の建物→地主の許可or裁判所の許可があれば譲渡可
  ⇒経済的価値
  →借地をしなくなる,地主現金化したい,担保に入れたい
   更新料等の負担から土地を買い取りたい
  →借地契約の減少(バブル以前3割,以降1割)
  ∴借地権に値打ちが出てから使いにくくなった.
   定期借地権等の特殊なニーズが大半.
  ∴借地権を消滅させる方向で動くと解決しやすい.
  cf.農地解放

立ち退き料
 外国の事例(実務的に使える書物はほとんどなかった)
  「不動産賃貸権の危機」(日経新聞社)
  実際行って調べてみた.
  立ち退き料支払いの法制度はない.
  (ドイツ)
  住居賃貸借⇒解約告知保護
  正当な利益,過酷要件(賃借人の代替物件ないなど)
  営業賃貸借⇒賃借人保護要件がない.あとは仲介業者の腕
  
 準備書面において「店舗用」「事務所用」と分けるべきだと
 書いたのは(このような事例は知らなかったが)世界的な流れに
 乗っていた.
 cf.アメリカ
  明渡し金という考えはない.
  居住者が老齢の場合には貸主の正当事由がかなり制限される.  契約時点で継続のオプションをつける.
  ただし契約は守る.
 cf.韓国
  チョンセ…借りる方がまとまった金を借りるときに支払い
   貸し主が運用益でまかなう.
   不動産が高騰すると使いにくい.
  オルセ…月極家賃
 ※ミクロからマクロを見る
  ここまで調べて12億が8億になる程度…(苦笑)
 ※背信性は独立の要件ではないが,他の要素と合わせ技.
  無催告解除特約の有効無効
   (背信性がある場合の挙証責任転換)
 老朽化…エレベータが動かない.
  エレベータ会社に言っても危険だから直さない.

規範がどのように組み立てられているか?
 正当事由,その一部としての補充金
 補充金の一部としての鑑定
 差額鑑定法は価格上昇場面では使えるが,
  下降場面では使えない.…結局見直し

定期借家権の利用増
 立ち退き料払いたくない
 賃料不払い・居座りを防ぎたい

相手は8億円が少ないといって控訴できるか?
 相手に請求権がない以上はできないだろう.

双方控訴後和解

細川は光村の子会社で,光村本社と同じ場所に引っ越した.
(大崎)

右陪席 升田純裁判官 要件事実の専門家 今どこかの教授(中大法科大学院)
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民事基礎演習(8)

2007/11/14 13:22
付帯請求について
途中で家賃を822万円に上げる請求をしている.

判決の書き方
〜日以降明け渡しまで
 →口頭弁論終結時の価格を計算してその分を明示する.

来週は判決文について討議する.
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民事基礎演習(7)

2007/11/07 12:46
論点
 正当理由or必要性
  老朽化・敷地の有効活用・自らの必要性
  正当理由の補強としての補充金

来週
 それぞれ判決主文を書いて火曜までにポストに投入.
 かつ担当者に渡す.
===
建物明渡請求事件
東京地裁昭六一(ワ)五四四八号
平3・5・30民三一部判決
原告 株式会社東海堂
右代表者代表取締役 川合庸吉
右訴訟代理人弁護士 廣田尚久
同 菊地美穂
同 市川正司
被告 株式会社細川活版所
右代表者代表取締役 杉江斌 ほか二名
右三名訴訟代理人弁護士 畑野有伴

       主   文

一 被告株式会社細川活版所は、原告から金八億円の支払を受けるのと引換えに、原告に対し、別紙物件目録記載の建物のうち、別紙図面中のイロハニホヘトチイの各点を順次直線で結ぶ線に囲まれた部分及び屋上部分を除いたその余の部分を明け渡し、かつ、平成三年二月一日から明渡済みまで一か月金九四五万八七五〇円の割合による金員を支払え。
二 被告株式会社細川活版所は、原告に対し、金八三九六万六一二六円及びこれに対する平成三年二月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
三 原告の被告株式会社細川活版所に対するその余の請求を棄却する。
四 被告株式会社銀座プロセスは、原告に対し、別紙物件目録記載の建物のうち五階部分を明け渡せ。
五 被告株式会社エイチ・エムインフォーメーションセンターは、原告に対し、別紙物件目録記載の建物のうち一階部分を明け渡せ。
六 訴訟費用は、原告と被告株式会社細川活版所との間においては、原告に生じた費用の三分の二を被告株式会社細川活版所の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告株式会社銀座プロセス、原告と被告エイチ・エムインフォメーションセンターとの間においては、それぞれ被告株式会社銀座プロセス、被告エイチ・エムインフォメーションセンターの負担とする。
七 この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。

       事   実

第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
(主位的請求)
1 被告株式会社細川活版所(以下「被告細川活版所」という。)は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)のうち、別紙図面中のイロハニホヘトチイの各点を順次直線で結ぶ線に囲まれた部分及び屋上部分を除いたその余の部分を明け渡し、かつ、平成三年二月一日から明渡済みまで一か月金九四五万八七五〇円の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社銀座プロセス(以下「被告銀座プロセス」という。)は、原告に対し、本件建物のうち五階部分を明け渡せ。
3 被告株式会社エイチ・エムインフォメーションセンター(以下「被告エイチ・エムインフォメーションセンター」という。)は、原告に対し、本件建物のうち一階部分を明け渡せ。
4 被告細川活版所は、原告に対し、金九八七〇万八六三六円及びこれに対する平成三年二月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は被告らの負担とする。
6 1ないし4項につき仮執行の宣言
(第一次予備的請求)
1 被告細川活版所は、原告から金二億八〇〇〇万円の支払を受けるのと引換えに、本件建物のうち、別紙図面中のイロハニホヘトチイの各点を順次直線で結ぶ線に囲まれた部分及び屋上部分を除いたその余の部分を明け渡し、かつ、平成三年二月一日から明渡済みまで一か月金九四五万八七五〇円の割合による金員を支払え。
2 主位的請求2ないし6に同じ。
(第二次予備的請求)
1 被告細川活版所は、原告から金六億円の支払を受けるのと引換えに、本件建物のうち、別紙図面中のイロハニホヘトチイの各点を順次直線で結ぶ線に囲まれた部分及び屋上部分を除いたその余の部分を明け渡し、かつ、平成三年二月一日から明渡済みまで一か月金九四五万八七五〇円の割合による金員を支払え。
2 主位的請求2ないし6に同じ。
二 請求の趣旨に対する答弁
(被告細川活版所)
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 仮執行免脱の宣言
(被告銀座プロセス、被告エイチ・エムインフォメーションセンター)
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 仮執行免脱の宣言
第二 当事者の主張
《略》

       理   由

第一 被告細川活版所に対する請求について
一 略
二 そこで、本件賃貸借契約の解約申入れに正当事由が存するか否かにつき判断する。 
1 本件建物の物理的状況について
(1)本件建物の形状
(2)構造の概要
(3)建物の現状と材料強度(建物の外壁の現状については、後記(4)を参照)
(ア)
(イ)
(ウ)…本件建物の外壁部分には無筋状態のためコンクリートの強度が低下している箇所がある。
(エ)…コンクリートの未充填による約一〇ミリメートルの空隙が存在する梁が見られ、…WG梁と柱とで囲まれた壁にはコンクリートの充填不足の部分が見られたが、(以下略)
(オ)鉄筋、鉄骨に顕著な発錆が見られる。(以下略)
(カ)…現在の一般的基準に照らせば、本件建物の構造強度は不足している。
(キ)…本件建物の各部の材料につき許容応力度設計(中程度の地震を受けたときに建物の各部の材料が建築基準法で定められた許容応力度以内に収まっていることを確認するための設計)をしたところ、外壁面内に内蔵されている壁梁の多くが許容する曲げモーメント及び許容せん断力を超えており、柱についても許容曲げモーメント以上の応力状態になっているから、本件建物の使用材料には許容応力度を超えて使用されているものがかなりあることになる。
(ク)本件建物の各階につき高低測定をしたところ、本件建物は全般的に数寄屋通り側より私道側に向かって低くなっており、こうした傾向は二ないし四階のいずれの階についてもいえるから、本件建物には不同沈下が生じている。
(ケ)本件建物にはエレベーターが一基設置されているが、老朽化がはなはだしく、現在は全く使用されていない。
(コ)杭ごとに、許容支持力(Na)と柱軸力(N)とを比較すると、その比(Na/N)
は、二・五四ないし六・〇九であり、安全率からみると、本件建物の基礎杭には充分な安全性がある。しかし、杭の支持力には杭材により決まるので、地下水位の低下により杭頭の断面欠損が生じた場合には、右安全率も低下する。
(4)本件建物の外壁の現状
(ア)(略)
(イ)前記(3)(イ)の調査の段階では、本件建物の外壁にはひび割れが生じていた箇所があったが、前記(3)(ア)の調査の段階では、各面ともひび割れ及びタイル、モルタルの浮きが多く観察された。
(5)本件建物の耐震性の有無についての計算結果
(ア)本件建物の短辺方向(X方向)と長辺方向(Y方向)について、想定した地震力が建物に作用すると思われる力(Qun:必要保有水平耐力)、建物が地震力を受けた時に期待することができると思われる耐力(Qu:保有水平耐力)の比(Qu/Qun)を求め、Qu/Qun>1.0をもって耐震性があるとすることとしたところ、本件建物の右の値は一ないし四階まではいずれも一・〇未満で、一、二階では〇・七以下となっている。
(イ)地震のときに建物が安定しているためには、建物の総重量の二分の一に建物の幅を乗じた値(安定の力)が転倒するモーメントを上回っていればよく、安定の力を転倒するモーメントで割った値を安全率とし、通常建物を設計する場合には安全率が一・五以上になるようにするところ、本件建物のうち、長方形部分の安定率は〇・八六八となるに過ぎない(なお、本件建物の建築当時の市街地建築物法の地震々度の基準値は〇・一で、現行法規の二分の一であったので、計算上は安定していた。)。
(6)以上認定の事実を踏まえると、本件建物の老朽化の進行状態、耐震性、外壁面の修理可能性等は、次のとおりである。
(ア)前記認定の本件建物の鉄骨梁フランジ下面等に生じている隙間、発錆の確認、コンクリートの充填不足等の観察結果などに鑑みると、コンクリートと鉄筋との一体性はかなり低下していると判断され、また、鉄骨及び鉄筋の発錆による断面欠損も確認されているから、本件建物はその耐震性を確保する上では極めて好ましくない状態にあり、総合的にみて本件建物の老朽化はかなり進行していると考えられる。
 また、本件建物の一ないし四階の必要保有水平耐力と保有水平耐力の比はいずれも一・〇未満であり、本件建物は耐震性に劣るといわざるを得ない。
(イ)本件建物の四面の外壁のタイルの剥離落下、特に地震による建物の振動に起因する剥離落下が懸念され、右(ア)も考え合わせると、単なる外壁修復では意味がなく、耐震補強という観点からすると、大規模な補強工事の中で外壁修復を実施すべきである。
 以上の事実が認められる。
《証拠判断略》
2 本件建物の外壁の管理状況、経過及び方法について
 後記3(一)の当事者間に争いがない事実、《証拠略》を総合すれば、次の事実が認められる。
(一)原告は、昭和二九年、同三七年、同四〇年、同五〇年、同五二年と合計五回にわたり本件建物の外壁の修理をしている(但し、補修部分に関する詳細は記録がないため明らかではない。)。
(二)その後も、本件建物の外装材(レンガタイル、吹付け材、モルタル)に浮きが生じたため、その剥離、落下のおそれが生じた。しかも、同五六年六月から、新聞紙上で、ビルの外壁からの外装材の剥離、落下の事実が報道され、また、東京都中央区役所建築部から、本件建物の外装材のタイルや開口部のパテの剥離、落下につき指摘を受けたことから、
原告は、同年秋、右落下防止のために本件建物の回りに安全ネットを張り巡らしたところ、同五七年四月、外装材テラカッタの欠損した破片が落下して右安全ネットに引っ掛かったことがあった。
(三)被告細川活版所は安全ネットではなく、本格的外壁修理を求めたが、原告が聞き入れなかった。そこで、同五六年一一月二日、被告細川活版所は、原告に対し、本件建物の北側及び西側の全外壁の破損箇所の修理を求める旨の訴え(東京地方裁判所昭和五六年(ワ)第一六四四号)を提起した(この事実は争いがない。)。右訴えは、その後取り下げられた。
(四)ところで、本件建物の外壁の修理方法としては、浮き部分に一種の接着剤であるエポキシ樹脂を注入するエポキシ樹脂注入法、液状のタイルを壁に吹き付ける吹付けタイル工事、タイルそのものを取り替えるタイル貼り替え工事、現在の外壁に下地を作ってその上に金属パネルを取り付けるカーテンウォール取付け工事が考えられるが、前一者は応急的な修理方法で、後三者は根本的な修理方法であり、カーテンウォール取付け工事が剥離、落下の防止のためには最も確実な方法である。
(五)しかし、本件建物の外壁に貼り付けられているタイルの下のモルタルはだんご張りモルタルであるため、エポキシ樹脂注入法では補修の意味がない。
(六)そして、修理費用は、エポキシ樹脂注入法の場合は金六八八万円(同五六年五月二〇日現在)、吹付けタイル工事の場合は金三五〇〇万円、タイル貼り替え工事の場合は金四五〇〇万円、カーテンウォール取付け工事の場合は金六二〇〇万円(以上、同五七年一一月一日現在)とされるが、建物の外壁の状態如何により修理費用には幅があり、カーテンウォール取付け工事の場合は金一億二〇〇〇万円を超える場合もありうる。
 以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
3 本件建物の利用状況及び原告と被告細川活版所との間の信頼関係の破壊について
(一)次の事実は当事者間に争いがない。
(1)被告細川活版所は、昭和二九年ころ、本件建物の屋上に三棟の仮設建設物を建設し、
作業場、宿舎、物置等に使用したため、原告は右収去と損害金の支払いを求めて訴えを提起したが、同三三年一二月一八日に訴訟上の和解が成立した。
(2)被告細川活版所は、同四八年、本件建物の五階部分を写真製版関係のレタッチ工場に改造し、これを被告銀座プロセスに使用させている。
(3)被告細川活版所は、同四九年七月、社員多数を指名解雇したことから労働争議が発生し、右労働争議期間中、本件建物の外壁に多数のビラが貼られた。
(4)被告細川活版所は、同五六年一一月二日、原告に対し、本件建物の修理を求める前記訴えを提起した。
(5)被告細川活版所は、同五八年八月、本件建物の一階部分の内装工事を行い、これを銀座アート・コムセンターに使用させた。
(6)被告細川活版所が同五九年四月分以降の賃料の増額請求に応じないので、原告は、同年五月一日、賃料の増額請求の訴え(東京地方裁判所昭和五九年(ワ)第四六七五号)を提起し、同六〇年五月二七日に訴訟上の和解が成立し、本件建物の賃料は同五七年四月一日から月額金五六六万六〇〇〇円、同五九年四月一日から金六三六万六〇〇〇円と定められた。
(7)被告細川活版所は、同六一年一月一八日及び一九日、本件建物の地階から三階までの階段部分の壁を削り落とし、塗り替える工事に着手し、同年二月一六日には右工事を完成させた。
(二)前記2(二)で認定した事実、右当事者間に争いがない事実、《証拠略》を総合すると、次の事実が認められる。
(1)本件建物は戦災に遭い、その内部が火災で燃えたため、被告細川活版所が本件建物に入居するに当たり、改築工事をする必要があった。そこで、原告と被告細川活版所は、昭和二一年三月一日本件賃貸借契約の際、本件建物の保存に必要な費用は被告細川活版所が負担することを合意するとともに、本件建物の改築、保存等のための費用を被告細川活版所が負担することとし、それゆえ、原告は本件賃借部分の賃料を一か月当たり金一五円とした。その後、原告と被告細川活版所は、同三七年八月三〇日、本件建物の保存に必要な通常の修繕費用は原告が負担すること、被告細川活版所が本件建物を変更することなく、内部の模様替え等をするときは、あらかじめ原告の同意を得ること、その費用は被告細川活版所の負担とし、賃貸借終了のときは原状に復することを合意した。また、その後の賃料は、二年に一回の割合で昭和五五年まで原告と被告細川活版所の合意により改定されてきた。
(2)ところで、被告細川活版所は、各種商業美術印刷を主たる営業目的とする株式会社で、銀座アート・コムセンターは、昭和四九年三月一二日、印刷に関する企画製作、デザイン写真撮影等を営業目的として被告細川活版所が設立した会社で、被告銀座プロセスは、同四八年八月四日、オフセット印刷における原版の写真製版を主たる営業目的として被告細川活版所が設立した会社である。被告細川活版所、銀座アート・コムセンター及び被告銀座プロセスは、オフセット印刷の工程の中心となる原版の製作作業を一体として行ってきた。すなわち、被告細川活版所の管理下において、銀座アート・コムセンターが原版の文字部分を作成し、被告銀座プロセスが、カラー印刷部分を製作したうえ原版となる写真製版フイルムを完成し、両社が完成させた原版に基づき、被告細川活版所の工場部門が受注数量の印刷物を製品化している。そして、被告細川活版所は、原版の製作作業を円滑に行うために、同四八年、本件建物の五階部分を写真製版関係のレタッチ工場に改造し、同四九年からは右五階部分を被告銀座プロセスに使用させ、その後、右一階部分を銀座アート・コムセンターに使用させた上、同五八年八月には本件建物の一階部分に内装工事を施すなどした。そして、現在、被告細川活版所は本件賃借部分を使用している。
 被告エイチ・エムインフォメーションセンターは、同五六年、印刷に関する写真植字版下の製作デザイン業務等を営業目的として設立された会社で、同六二年一月一二日には銀座アート・コムセンターを吸収合併し、銀座アート・コムセンターに引き続いて本件建物の一階部分を使用して、被告細川活版所の受注した原版作成の工程を分担している。
(3)被告細川活版所は、昭和二一年に原告から本件建物の引渡しを受け、現在に至るまで本件賃借部分を使用してきたが、原告と被告細川活版所との間には、本件賃貸借契約の成立後、前記(一)のような紛争が繰り返されてきた。なお、右における被告細川活版所の各工事は、事前に原告の承諾を得ていないものであった。そして、現在同被告は、賃料を供託している。
 以上の事実が認められ(る。)《証拠判断略》
(三)ところで、原告は、被告銀座プロセスが本件建物の五階部分を、同エイチ・エムインフォメーションセンターが本件建物の一階部分をそれぞれ使用しているが、右は、被告細川活版所による無断転貸であり、前記(二)(3)認定の事実も勘案すると、原告と被告細川活版所との間の本件賃貸借契約における信頼関係は破壊されている旨主張する。
 しかし、前記認定の事実によれば、被告銀座プロセスと同エイチ・エムインフォメーションセンターは被告細川活版所の行う営業の一部門を担当するいわゆる子会社であり、原告も相当以前から同被告らの使用の事実を知っていたことが認められ、また、前記(二)(3)の紛争の一部はすでに解決済みであり、その余のものも、いまだ原告と被告細川活版所との間の本件賃貸借契約における信頼関係を破壊するに至るほどのものとは認め難い。
 右によれば、原告と被告細川活版所との間の本件賃貸借契約における信頼関係が破壊されたということはできないから、この点に関する原告の前記主張は理由がなく、採用することができない。
4 原告による本件建物の建替え計画について
《証拠略》によれば、次の事実が認められる。
(一)原告が本件建物の敷地に建替えを予定している建物(以下「建替建物」という。)は、地上八階、地下三階、延面積三四九七・三〇平方メートル(一〇五七・九三坪)で、一階、二階は店舗用、三階以上は事務所用である。
(二)施工は株式会社大林組の予定であり、原告は、昭和六〇年一二月、建替建物の設計図面を作成させた。
(三)原告は、本件建物の賃料のほかには収入がなく、建替建物の建築費用は借入金でまかなう予定である。原告は、昭和六〇年に一旦借入計画を立てたが、本件建物の明渡しの問題が決着しないので、その後は具体的な借入計画を立てていない。
5 本件建物の立地条件について
《証拠略》によれば、次の事実が認められる。
 本件建物は中央区銀座六丁目一〇二番地八、一〇二番四一(登記簿上は同九)の土地上に存し、JR山手線有楽町駅の南方約三二〇メートル、地下鉄銀座総合駅数寄屋橋口(C2またはC3出口)の南西約一五〇メートルの距離に位置し、近隣地域は、商業集積度の最も高いとされる銀座地区であり、物販店、娯楽飲食店、会社事務所等の中高層ビルの立ち並ぶ高度商業地域である。
6 被告らによる本件建物使用の必要性について
《証拠略》を総合すれば、次の事実が認められる。
(一)被告細川活版所は、昭和二一年の賃借当初は、本件建物の大半を印刷工場として使用していたが、その後、新富工場、大井工場、目黒工場、亀戸工場を有するに至り、同四六年には埼玉県草加市松江町に土地二万二四九一平方メートル、延面積一万一一一一平方メートルに及ぶ一階建の印刷工場(草加工場)を建設し、本社の工場部門の大部分を草加工場に移転するとともに、大井工場、亀戸工場、新富工場を草加工場に統合した。同四九年には、川越工場を設けたが、同六三年には草加新工場が完成し、平成元年、川越工場を草加新工場に統合した。目黒工場はその後、光南印刷株式会社として独立させたが、同社は被告細川活版所の子会社である。
(二)現在、本件建物において稼働中の工場部門は、原版製作の工程のみであり、被告エイチ・エムインフォメーションセンターが原版の文字部分を本件建物の一階部分で製作し、被告銀座プロセスがカラー印刷部分を製作した上、原版となる写真製版フイルムを本件建物の五階部分で製作している。
 通常、完成した原版は草加新工場、目黒工場、若しくは下請に送られて印刷され、印刷物の完成後は大井にある倉庫に集結させた後、発注先に納入するが、納期が短く、緊急を要する場合には、完成後、各工場から直接本社宛に送られ、本社から各発注先に納入される。これが被告細川活版所のひとつのセールスポイントとなっており、緊急を要する仕事を受注できるのは、原版の製作を担当する工場部門と営業部門が本件建物に同居していることが強みである。しかし、他の印刷会社では、工場部門と営業部門が切り離され、それぞれ別の場所にあるものが多い。
(三)被告細川活版所の納入先は,大蔵省、運輸省、東京都等の官公庁、東京証券取引所、東京金融先物取引所等の各種団体、日本銀行、富士銀行等の金融関係、第一生命、山一証券等の保険・証券関係、ヤマト運輸等の運輸・物流関係、西武百貨店等の商業・サービス関係、ソニー、日産自動車等の一般商工業関係などである。
(四)被告細川活版所は、本件建物のうち、右(二)の工場部門を除くその余の部分のうち地階、一階(但し、被告エイチ・エムインフォメーションセンターが使用している部分を除く。)、二階(但し、二階のうち、別紙物件目録添付の図面に示された部分を除く。)
、三階、四階は、本社部門として代表者室、管理、営業、生産、生産管理、商品技術開発の各部門が使用しており、営業部門には営業マンが一〇〇名以上いる。 
 被告細川活版所には、右本社のほか、大阪支店、名古屋営業所があり、そのほか細川倉庫株式会社等の関連会社がある。
(五)被告細川活版所は、商業美術印刷のほか、ビジネスフォーム印刷、証券、通帳印刷、書籍、刊行物印刷、磁気印刷、プリペードカード印刷等を手がけており、平成元年一一月現在、その従業員数は合計三八一名であり、その年間の売上は、昭和六三年度金一三七億六八六四万円、平成元年度金一五四億二三三五万円である(これには関連会社の売上をすべて含む。)。
(六)被告銀座プロセスが写真製版フイルムを製作する過程で現像液、定着液の廃液と合成樹脂屑が出るため、被告細川活版所は、東京都公害防止条例に基づき、東京都中央区環境衛生部公害対策課から工場の認可を受けており、廃液は株式会社日本資材に回収させ、合成樹脂屑は売却している。
(七)被告細川活版所が右のような営業部門と原版作成の工場部門の同居という営業形態を維持しつつ、前記工場の認可を受け、本件賃借部分と同程度の面積の建物を本件建物の近隣において賃借することは必ずしも容易ではない。
 以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
7 正当事由についての比較考量
(一)以上によれば、本件建物はそれ自体老朽化が相当進行しており、耐震性の点で危険性を否定することができないこと、右老朽化に対する補修、耐震性のための補強には、相当高額の費用を必要とするが、それにより本件建物の機能が増加するというものでもなく、
右補修、補強に要する費用とその回収の可能性という経済性を考慮すると、賃貸人たる原告に高額の費用を伴う右補修、補強を要求することは酷であり、むしろ本件建物を取り壊して建て替える方が経済的であること、本件建物は銀座という土地の高度利用、有効活用が望ましい場所に立地していること、原告は、現段階では資金計画等を具体的には立案してはいないが、本件建物の敷地に建替建物の建築計画を準備していることなどに鑑みれば、原告が本件建物を取り壊してその敷地に建物を新築しようとすることには相当高度の合理性があるということができる。
(二)これに対し、被告細川活版所の営業形態等の事情を考えると、被告細川活版所が本件建物を明け渡した場合には、近隣の場所で現在と同じ営業形態をとることが困難になり、そのために当面不利益を被ることは否定できないところである。
 しかし、本件建物の老朽化は相当進行しており、本件建物は早晩朽廃を免れないのであり、その場合には他の場所への移転は避けられず、結局は現在の営業形態を将来にわたって継続することは困難であり、早晩その変更は避けられないこと、被告細川活版所の他の場所への移転に伴う営業形態の変更による不利益は、緊急を要する注文のすべてに現在のように応ずることができないというに過ぎないこと、他の印刷会社では原版製作を担当する工場部門と営業部門が離れた場所にあるものが多く、そのためファックス等を利用して顧客の注文に応じており、被告細川活版所においても、これまでの経験と営業努力などによりその対応は可能であると考えられ、場所の移転により、被告細川活版所の営む印刷業自体が潰滅的や打撃を受けるとは認め難いこと、本件訴えの提起後、口頭弁論の終結までにすでに約五年が経過しており、その間、被告細川活版所は本件賃借部分の使用により相応の利益を上げていること、認可を受けているとはいえ、銀座のような都心部に前述のような工場が存するのは土地の有効利用等の観点から望ましいものとはいえないことなどを勘案すると、被告細川活版所において、ある程度の経済的不利益が懸念されないではないにしても、それを理由に原告の明渡の請求を否定するほどの事情ではない。
(三)ただ、被告細川活版所に本件建物の明渡しにより生ずる経済的不利益をすべて甘受させることは、右(二)の事情に鑑み、相当ではなく、本件建物の明渡しを無条件で認めることはできない。したがって、原告のこの点に関する主位的請求は理由がない。
 そして、立退料の提供を補強条件として、初めて本件賃貸借契約の解約申入れは正当事由を具備するというべきである。
3 立退料の算定について
 そこで、右の見地から、立退料について検討する。
(一)原告が、被告細川活版所に対し、昭和六三年二月二三日の第一二回口頭弁論期日において、立退料として金二億八〇〇〇万円を提供することを申し出、平成三年二月五日の第三四回口頭弁論期日において、立退料として金六億円を提供することを申し出たことは、当裁判所に顕著である。
(二)立退料の算定について、被告細川活版所は本件借家権価格の鑑定に基づき、これを基準にして算出すべきであると主張するのに対し、原告は本件借家権価格の鑑定において採用された算定方法、算定の基礎となる事実に誤りがあるなどとして、鑑定人横須賀博の鑑定の結果を争い、独自の算定方法を主張する。
(三)そこで、まず、鑑定人横須賀の鑑定の結果の当否につき検討する。
(1)《証拠略》によれば、次の事実が認められる。
(ア)本件借家権価格の鑑定において、昭和六一年四月一四日当時の本件賃借部分の借家権価格は金六億五三七〇万円、同六三年一二月一〇日当時のそれは金一二億七〇六〇万円とされ、これは差額賃料還元法、割合方式、補償方式の各ウエイトをそれぞれ七〇、一五、一五(各パーセント)としたことにより得られたものである。鑑定人横須賀は、差額賃料還元法が最もよいと考えたが、銀座界隈では割合方式による借家権価格の算定がよく行われており、また、補償方式も全く無視できないため、右のような割合で本件借家権価格を算出した。
(イ)ところで、右借家権の評価方式のうち、割合方式は、相続税財産評価基準における借家人の権利相当額の評価方法を準用して求めたもので、借家権そのものを捉えて課税の対象としているのではなく、貸家の評価の場合に借家人居付きの状態でのその借家人の存在を理由とする交換価値の減少分を捉えて、貸家評価の際の控除項目としている。右方式によると借家権の算定は、簡便である反面、課税技術上の要請から画一的な一定の割合による控除であるから、建物明渡しの際の借家権の評価方式としては個別性に欠けるとの欠点がある。
(ウ)補償方式は、損失補償基準の建物移転等に伴う借家人に対する補償額の手法を準用して求められたもので、損失補償基準は賃貸借契約関係が通常に維持継続されている場合であっても、不随意にその賃貸借を終了させ、立退きを余儀なくされる場合の補償であり、借家人が不随意に明渡を求められている場合には一般的にも十分支持できる手法である。

(エ)差額賃料還元法は、評価対象の経済価値に即応した適正な賃料すなわち正常実質賃料から実際支払賃料を控除したいわゆる借り得分をその持続する期間により有期還元して求められたもので、賃貸物件の経済的価値を同物件に投下された資本と見て、それを一定の期待利回りで運用した場合に得られる運用益に賃貸物件の維持に要する管理費と公租公課を加えた額を正常実質賃料とするが、現実に支払われている賃料が安ければ安いほど、借り得分は増大するという関係にある。
 土地の更地価格の上昇に伴って賃料額も上昇すれば、期待利回りもほぼ横這いとなるが、土地の更地価格の上昇に比して賃料額が上昇しないとすれば、期待利回りは低下する。そして、昭和六一年四月から同六三年一二月にかけては土地価格の異常な高騰があったが、銀座では賃料額も相当上昇したので、鑑定人横須賀は、その鑑定において期待利回りを二パーセントと固定した。
(オ)本件借家権価格の鑑定の評価対象となる賃借人としては、被告細川活版所のほかに、被告銀座プロセス、銀座アート・コムセンターが挙げられている。
(カ)本件建物の近隣の地価動向については、昭和六二年一一月以降、高値安定の横這い状態であるとしている。なお、取引事例として昭和六三年一月以後の事例は掲げられていない。
(キ)本件建物の敷地の更地価格を算出するに当たり、そのうち、一〇四・三六平方メートルは日本殖産興業株式会社からの借地であるにもかかわらず、この点が勘案されていない。これは鑑定人横須賀において借家権価格算定の前提としての更地価格を算出する場合には、建物の有無が重要であり、借地か否かは関係ないと考えたからである。
(ク)鑑定人横須賀は、本件建物の物理的残存価値を五パーセント、建物の使用可能年数を一〇年と判断する一方、本件建物の減価償却費は、本件建物の状況を踏まえ、ゼロとしている。
 そして、差額賃料還元法による借家権価格は、昭和六三年一二月一〇日時点で金九億三九六〇万円、同六一年四月一四日時点で金四億〇四五〇万円であるのに対し、補償方式によるそれは、同六三年一二月一〇日時点で金一九億八一八〇万円、同六一年四月一四日時点で金一二億〇九二〇万円、割合方式によるそれは同六三年一二月一〇日時点で金二一億〇三九〇万円、同六一年四月一四日時点で金一二億六一〇〇万円であり、差額賃料還元法による借家権価格は補償方式、割合方式の約二分の一となっている。
(ケ)補償方式において、借家人が他に代替物件を賃借するために通常要する費用は、土地の更地価格と建物の価格に一定の率(それぞれα、βとする)を掛けて求められるところ、本件借家権価格の鑑定において更地価格に対する率αは〇・二、建物に対する率βは〇・四として算出されている。通常、事務所及び工場にはαは〇・一ないし〇・二五、βはその用途如何にかかわりなく〇・四の範囲内とされており、右鑑定においては本件建物が事務所用として用いられていること等を勘案してαは〇・二、βは〇・四が採用されている。
(コ)支払賃料については、被告細川活版所の支払賃料が月額金六三六万六〇〇〇円であることを前提として本件借家権価格の算定をしている。
(2)以上の点について検討すれば、
(ア)本件建物は相当老朽化しているものの、前記認定のとおり直ちに倒壊の危険があるというわけではなく、鑑定の前提として使用可能年数を一〇年としたことが必ずしも恣意的とはいえない。
 減価償却は、使用及び時の経過のため固定資産等に生ずる減価を各決算期毎に記帳していく税法上若しくは財務上の措置であり、減価償却がゼロとなったからといって、直ちに固定資産等が使用不能となるわけではなく、使用可能年数を一〇年と設定したことと何ら矛盾するものではなく、補償方式における率α、βの設定が恣意的であるということもできない。
 被告細川活版所の支払賃料は昭和六〇年五月二七日に成立した訴訟上の和解において定められたもので、その後、賃料は改定されていないから、本件借家権価格の鑑定に当たりこれを用いたことに不当な点はない。また、前記認定のとおり被告銀座プロセス、銀座アート・コムセンターは被告細川活版所の子会社であるから、これを賃借人と見ることも直ちに不当とはいえない。
(イ)昭和六三年一月以後の取引事例が掲げられていないからといって、直ちに土地価格が下落傾向にあるとはいえないし、これを認めるに足りる的確な証拠もない。
(ウ)前述の差額賃料還元法については、実際支払賃料が安ければ安いほど借り得分が増大するとの関係にあり、また、地価の上昇に比べて賃料の上昇の度合いが小さければ、期待利回りも低下するとの関係もある。しかし、本件借家権価格の鑑定のされた昭和六一年四月から同六三年一二月にかけて、銀座地区においては地価の上昇の度合いに合わせて賃料も上昇しているというのであるから、期待利回りを二パーセントと設定したからといって、借家権価格を算出するための一つの方法として意味がないということはできない。
 なお、正常実質賃料は、その場所を人に貸した場合、どの程度の賃料が得られるかというもので、特定の個人に対する賃貸を前提とはしていないから、現実の利回りではなく、期待利回りを用いても特に不当とはいえない。
 また、前述のように、割合方式、補償方式にも、一長一短があるが、借家権価格を算出するための一つの方法として意味がないということはできない。
(エ)そして、本件借家権価格の鑑定において、差額賃料還元法、割合方式、補償方式のウエイトの置き方に明確な根拠があるわけではなく、本件建物の敷地のうち日本殖産興業株式会社から賃借している部分の上に存する本件賃借部分の借家権価格の算定に当たり、敷地が借地であることが考慮されておらず、また、地価高騰の結果が直截に反映され、わずか二年の間に借家権価格が倍増していることには相当とはいえない面があるものの、右(ア)ないし(ウ)のとおり、鑑定人横須賀の採用した評価方式、算定の基礎とした事実に他に特段の誤りというほどのものはなく、本件借家権価格の鑑定には、本件賃借部分の借家権価格を算定する上で、使用できないような致命的な誤謬があるということはできない。
(オ)ただ、差額賃料還元法は、現実に支払われている賃料が低廉であればあるほど、借り得分が増大するという関係にあり、特に長期にわたる賃貸借にあっては賃料が比較的低廉に据え置かれていることが多く、かつ、その間の借家人の借り得分の蓄積も膨大なものになることは容易に想像のつくところであるから、差額賃料還元法により得られた借家権価格をそのまま建物明渡しにおける立退料と見ることは相当ではなく、本件建物明渡しの際の立退料を算定するに当たっては、本件借家権価格のほか、建物の現状、賃貸借の継続した期間、今後の建物の使用可能年数、近隣の賃料額との比較、地価の急激な上昇等を勘案して、立退料を決すべきである。
 なお、原告は、立退料として借家権価格相当の金員を支払わせることは、場合によって、既払賃料の返還となり、有償契約たる賃貸借契約の根幹を揺るがすことになるから相当ではないと主張する。しかし、立退料は、賃借人が不随意に賃貸借契約を終了させられる点を経済的に補完しようとするものであるから、賃貸借契約における賃借人の賃料支払義務とは別次元の問題であり、立退料の支払が、たとえ実質的には既払賃料の返還になったとしても、当然に賃貸借契約の根幹を揺るがすことになるとはいえない。
(四)そこで、本件賃借部分の立退料につき検討する。
 前記認定、説示のとおり、本件借家権価格の鑑定によれば、本件賃借部分の昭和六一年四月一四日当時の借家権価格は金六億五三七〇万円、同六三年一二月一〇日当時のそれは金一二億七〇六〇万円とされること、借家権価格の算定に際し、地価高騰の結果が直截に反映され、わずか二年の間に借家権価格が倍増することは必ずしも相当とはいえないこと、本件建物の明渡請求においては、賃貸人の請求の基礎となる正当事由の内容、その程度如何を考慮して立退料の額を決すべきところ、前述のとおり、本件建物の老朽化は相当進行しており、その修復を原告に求めるのは酷であるから、原告の本件賃借部分の明渡請求には相当高度の合理性が認められること、他方、本件賃貸借契約はすでに五〇年以上も継続しており、その間の被告細川活版所の借り得分の蓄積は相当莫大であると考えられること、被告細川活版所はいずれ早晩、本件建物の老朽化、朽廃により他の場所に移転せざるを得ず、その場合には現在の営業形態の変更は必須であること、そして、営業形態の変更による経済的不利益は相応の立退料の支払により填補が可能と考えられることなど本件において認定された前記諸事情を総合考慮すると、本件における立退料は金八億円が相当である。
 右認定に反する原告の主張は、前認定、説示に照らし、たやすく採用することができない。
9 本件賃貸借契約の終了時期について
 そして、解約申入後にされた立退料等の金員の提供または増額の申出であっても、これを当初の解約申入れの正当事由を判断するに当たって参酌することができると解されるから、本件賃貸借契約は、昭和六一年四月一四日の経過により終了したものと認められる。
10 本件賃借部分の賃料相当額について
(一)本件賃借部分の昭和五七年四月一日から同五九年三月三一日までの賃料が月額金五六六万六〇〇〇円、同年四月一日以降の賃料が月額金六三六万六〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。
(二)《証拠略》によれば、本件建物の敷地の近隣にある都基準地(中央区銀座七丁目所在)の取引価格(一平方メートル当たり)は、昭和六一年七月当時は金一三六〇万円であったが、同六三年七月は金二〇五〇万円と約一・五倍に上昇していることが認められる。

(三)そうすると、公租公課の上昇に伴う原告の経費負担の増大、近隣賃料の上昇などを勘案すると、本件賃貸借契約における賃料が相応の範囲で上昇するのもやむを得ないというべきである。
(四)右の点、原告と被告細川活版所との従来の賃料値上げの状況及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件賃借部分の賃料あるいは賃料相当損害金は、原告主張のとおり、昭和六一年四月一日から同六三年七月二〇日までは月額金七一五万二二〇〇円、同年七月二一日から平成二年八月三一日までは月額金八二二万五〇〇〇円、同年九月一日以降は月額金九四五万八七五〇円をもって相当と認められる。
(五)ところで、原告は、平成三年二月五日の第三四回口頭弁論期日において、被告細川活版所に対し、昭和六一年四月一五日から平成三年一月三一日までの賃料相当損害金等金九八七〇万八六三六円の支払を求めているが、右によれば、被告細川活版所が毎月供託している金員と賃料相当額の差額の合計は,別紙使用損害金の差額計算書記載のとおり金八三九六万六一二六円と認められる。
(六)なお、原告は借家法七条二項に基づき年一割の利息も合わせて請求しているが、本件は賃料の増額を請求している事案ではないから、同法を原告の本訴請求に適用する理由はなく、原告の主張は、採用することができない。 
 ただ、原告は不動産の賃貸等を業とする株式会社であるから、本件賃貸借契約は商行為と認められ、したがって、原告の右賃料相当損害金の請求には、平成三年二月一日から商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を付することができる。
(七)そうすると、原告の本件賃料相当損害金等請求のうち金八三九六万六一二六円及びこれに対する平成三年二月一日から商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は、理由があるが、その余は理由がない。
第二 被告銀座プロセス、同エイチ・エムインフォメーションセンターに対する請求について
一 請求原因1及び8の事実は、当事者間に争いがない。
二 前記認定、説示のとおり、被告銀座プロセス、同エイチ・エムインフォメーションセンターは、被告細川活版所の一部門で、いわゆる子会社であり、原告は、同被告らに対し、当然に明渡しを求めることができず、同被告らは、本件建物の五階部分、一階部分につき占有権原を有するといえるが、原告は被告細川活版所に対し本件賃貸借契約の終了を理由に本件賃借部分の明渡しを求めているところ、前述のとおり立退料金八億円の支払と引換えに原告の明渡請求を認容するのが相当であるから、右被告らにおいても、右占有権原を主張することはできない。
第三 結論
 以上によれば、原告の被告細川活版所に対する請求は、立退料金八億円の支払と引換えに本件賃借部分の明渡し、平成三年二月一日から明渡済みまで一か月金九四五万八七五〇円の賃料相当損害金の支払、金八三九六万六一二六円及びこれに対する平成三年二月一日から支払済みまで商事法定利率の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、被告銀座プロセス、同エイチ・エムインフォメーションセンターに対する請求はいずれも理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条を適用し(本件建物の明渡しを求める部分については相当でないからこれを付さない。
)、なお、仮執行免脱宣言は付さないこととして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 淺野正樹 裁判官 升田純 鈴木正紀)
別紙 物件目録
所在 東京都中央区銀座六丁目一〇二番地八、九
家屋番号 一〇二番八の二
種類 店舗(現況は事務所)
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根五階建(現況は鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階地上五階)
床面積 一階 四〇七・二七平方メートル
    一階以外二〇一九・六六平方メートル
別紙 図面 物件目録の建物の二階部分《略》
使用損害金の差額及び利息計算書《略》
使用損害金の差額計算書《略》
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民事基礎演習(6)

2007/10/31 12:39
乙の取りうる方法を検討
錯誤…実際に建物を建てる目的はない.
 地代を払っている以上,いずれは建物を建てるであろう.
 建物目的…乙にとって建物が建っていないことは有利な状況
 要素の錯誤の要件自体を満たすかどうかわからない
 売買するつもりが実は父親になかった.
  →それだけで賃貸借を錯誤無効にできるか?
行政契約…契約内容が乙に不利すぎる.
契約解除…相続税の支払い→やむを得ない事情or事情変更
土地買取請求
増額請求

基本的に相手がうんと言ってくれないと弱い.
買取請求に応じさせるような論理が必要.

乙→市会議員→市会議長→廣田先生
市に頼みにいってはだめ.陳情になってしまう.
契約書をよく読む.

タイトル「土地賃貸借契約書」…父親対策,
 ごまかされてはならない.売買予約もある.
 契約第9条…甲の申し出があるときは
  →売買の一方の予約・期間がない.
  →民法556条…催告権・解除権
   これに伴って賃貸借を解除できるかは問題.
   先生の見立てでは7割.
   なぜなら権利金をもらっていないから.(契約第10条)
   賃貸借の価格は木造なら7割,鉄筋なら8〜9割.
   (結構面倒くさいので借地権の利用は減っている.
    ┌(所有権売買に代わっている)
    |日本の借地(瀬川信久)に
    └ 廣田先生の理由私見が載っている)
   権利金をもらっていなければ乙は丸損.
 使うつもりで法律を勉強すれば頭に入るだろう.

次回…第2次予備的請求として6億の請求を出したことを留意.
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民事基礎演習(5)

2007/10/24 13:30
考慮事項
形式的形成訴訟における処分権主義
共有の規定・判例
境界確定
借地権(旧)
当事者の利害・要望
事実…かなり広い

形式的形成訴訟における処分権主義
公の境界と私の境界を分けて交渉もできる。→複雑
→ADR制度,境界確定制度
判決を出させるような案を持っていかなければならない。

当事者の主張がないのに建物や賃借権の分割判決ができるのか。
原告はもともと主張すらしていない。

⇒借地権・境界には触りたくない
縦の線と横の線の分割のバランス

家に台所と玄関・手洗いが2つづつある。
家を上下で半分に切る。日本建築は増築も縮小もできるはず。
姉が上、妹が下を取る。

Q姉はそのままがいいと言っているのではないか?
所有権は各自所有が原則。
姉の分割がいやだという要望は原則の前では弱い。

借地権との境の縦線…20cm〜30cmだけ共有で残す。

弟は近くに住んでいる。どちらにも中立だが
姉の面倒を良く見ていた。

実際には調停で当事者間では納得した。

病院で調停期日を開く。
調停調書の説明。

おへそ曲がりの贈り物 広田先生の著書

二本果敢に線を引いただけで、報酬・遺産分割・児童養護施設に寄付・著書・ロースクールの教材になった。
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タイトル 日 時
民事基礎演習(4)
形式的形成訴訟→だからどうなんだ。  処分権主義・弁論主義の適用がない  そこがどうかかわってくるか?  訴状には建物をどうするか書いていない、   被告が建物を分割の対象とするように主張   原告も訴えの変更で建物の存在認める→建物の分割を認めた?  そういわないときに建物を分割しても言いか   そこまで処分権主義の適用がないと言ってよいか  同様に借地権も問題となる   判決を求められたとき裁判官はどこまで手をつけられるか?  そういう歯止めがないと裁判官の勝手に線を引か... ...続きを見る

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2007/10/17 12:38
民事基礎演習(3)
この件で表見代理の類推適用の法理(外観法理)は他の何の法理とぶつかっているのか→登記に公信力がない(弁護士にとってはこれが一番問題になる。本件でも弁護士は慎重に判断している) ...続きを見る

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2007/10/10 12:46
民事基礎演習(2)
宇奈月温泉事件 ...続きを見る

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2007/10/03 13:44
民事基礎演習(1)
オリエンテーション・ ...続きを見る

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2007/09/26 12:47

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